時代の流れというものを考えなければ、商売はうまくいかない。

経営指導する際は、時代の背景を考え、さらにその場所の特色も考えなければならない。

欧米のものは何でも正しいと思い込んで取り入れようとする者がいるが、日本という文化、そして時代の流れを読み間違えれば、まったく商売では意味をなさない。

経営指導も同じ、日本文化を考慮し、時代背景を考慮し慎重に異国のものを活用する必要がある。

その時代その時代で必要とされるものは変わる。

当然のことだが、その時代その時代で必要とされるものは変わってくる。

戦後の焼け野原で商売をするならまず食べ物だ。
そして、家などの建物を作り、それらを結ぶ道路を作る。
衣食住が整ったら、疲れを癒したり、遊んだりする場所が必要になってくる。

難しくはない簡単な理屈だ。
この簡単な理屈を個人の思い入れでねじ曲げようとしてはいけない。

物質的なものが溢れかえっている現代、人は何を渇望しているのか。
常にそれを考えるのが商売だ。

時代に合っているものを売ろうとしているのか。
少し時代を先取りしすぎているのか。

大体はこのどれかに当てはまる。

例えば、現代において脱脂粉乳を人気商品にするのは難しいが、牛乳と同い成分の錠剤を売るのも難しいだろう。

時代は、単においしい牛乳を求めているとするならば、そのストライクゾーンめがけて玉を投げればよいのだ。
これも実にシンプルな話だ。

しかし、それでもやっぱり場所の特性というのは無視できない。

場所の特性も無視できない

簡単に言えば、北海道と沖縄では地域特性が違うから、商売の仕方が変わってくる。

寒い地域は、物が必要になる傾向がある。
家は断熱材が必要だし、ストーブも必要だ。除雪に関するものも必要になってくる。

暖かい地域は、凍死する心配がないので、家の作りは簡単でもたいして支障はない。
衣類も寒い地域ほどバリエーションは要らない。

寒い地域に住む人間は必然的に堅実性が高くなるが、暖かいと楽観的になるので、備えるようなものは売れにくい。

また、都会と田舎という対比でも売れる商品は当然変化してくる。

商売人は謙虚に学ばなければならない。

このように売っている商品、売ろうとしている商品が、時代の流れの中でどういう役割を果たすのか、また場所が変わったとき、求められる変化に対応できるものなのかという視点を、経営指導を行う者は忘れてはいけない。

昔は売れても、売れなくなる物もあるし、ある場所ではバカ売れしても、ある場所では見向きもされないということはよくある。

冷静に考えれば、簡単なこの理屈だが、「売りたい」とばかり欲目になっている商売人には理解されにくいこともある。

力づくでも時代の流れを自らの力を持って変えようとする自己顕示欲や、地域特性を調査しない文化に対する無理解は、必ず経営に打撃を与える。

そういう意味で、商売人は謙虚に学ばなければならない。

歴史を学べば未来がおのずと見えてくる。
地域の文化を学べば、その地域に何が必要なのか必ず見えてくる。

売ろう売ろうとする前に準備としての学問は欠かせない。
試験で点数を取る学問ではなくてよい。

時代を読む力、地域文化に敬意をはらい謙虚に吸収する力が養われていけばよいのである。

歴史がなく、突如として世に現れるものなどないのである。(この項目は以上)